【現状と課題】
サービス業系は飲食・小売・宿泊・介護・教育・ITサポートなど、人と人との関わりを通じて価値を提供する産業であり、日本の経済活動を支える中核的な分野の一つです。GDPや就業者数においても大きな割合を占めており、国民生活と密接に結びついた業界といえます。
現在のサービス業界の現状としてはコロナ禍で落ち込んでいた需要が回復傾向にあり、ほかにもインバウンド需要の増加や個人消費の持ち直しによって、売上が増加している企業も見られます。特に観光・宿泊業や飲食業などで追い風となっており、好調な業績を示す企業も少なくありません
その一方で、人手不足や労働環境の改善が喫緊の課題となっています。特に中小規模の事業者では求人を出しても応募が集まらず、パート、アルバイト、シルバー人材の活用や派遣労働、技能実習制度(2027年度より育成就労制度)に頼らざるを得ません。将来のリーダーを担う人材の育成は急務です。
さらに顧客ニーズの多様化やデジタル化への対応も急務となっています。特に飲食や宿泊などではキャッシュレス決済・オンライン予約・SNSでの情報発信などをトータルで活用した顧客対応が求められる一方で、それに対応できる人材や体制が整っていない企業も多く見られます。つまり、「サービスの質を上げたいのに、人的・技術的リソースが足りない」というジレンマに直面しているのが実情です。
このように、サービス業界は大きなポテンシャルを持ちながらも、持続的な成長のためには「人」と「仕組み」の両面での改革が求められています。
こうした業界全体の課題はあるものの、サービス業界は人と人との関わりを通じて価値を生み出す産業です。幅広い視点を持ち、自ら考えて行動できる人には多くの活躍の機会があります。
・高校生の就職率
サービス業界は飲食、小売、宿泊、介護など幅広い業種が含まれており、非常に多彩かつ選択肢の多い分野です。実際、令和6年度の文部科学省「学校基本調査」によると、高卒就職者全体のうち約33.0%(16,346人)がサービス職に就いており、製造業に次いで多い割合となっています。
一方で、離職率は厚生労働省「令和5年雇用動向調査」によれば、生活関連サービス業・娯楽業(離職率20.8%)や宿泊業・飲食サービス業(18.2%)など、サービス業の多くは全産業平均(15.4%)と比べて離職率が高い傾向にあります。現状では人手不足や労働条件の厳しさなどが背景にあり、就職先を選ぶ際は、職場環境や労働内容をよく理解しておくことが大切です。
人と接することが好きで柔軟な対応ができる高校生にとっては、やりがいを見出しやすい職場も多く、自分に合った環境を見極めるようにしましょう。
就職率について
・サービス業系の業界に就職するメリット
1. 「人間力」を武器に、チャレンジしやすい環境が整っている
サービス業系の業界は「人と接する力」や「気配り・対応力」といった、人間力やコミュニケーション力が重視される業界です。そのため、「現場でどう動けるか」「お客様にどんな対応ができるか」が評価されやすい傾向にあります。職種によっては履歴書よりも人柄ややる気を重視する企業もあるほどで、面接でのイメージが高く評価されます。さらに、しっかりとした研修制度やマニュアルのサポート体制が整っている企業が多く、初めての就職でも不安を感じにくい点が魅力です。こうした環境が整っていることで、新卒からでも自信を持ってキャリアをスタートすることができるのです。
2. キャリアアップのチャンスが多く、若いうちから店長や管理職を目指せる
サービス業は成果や働きぶりが評価されやすく、年齢に関係なく昇進・昇格できるチャンスがある業界です。特に飲食店や小売業では早ければ20代前半で店舗責任者やエリアマネージャーを任されるケースもあります。実力主義の風土が根づいている企業も多く、「頑張りがそのまま評価される」「結果を出せばポジションを任せてもらえる」といった前向きな環境で働けるのが、サービス業の大きな魅力のひとつです。
3. 対人スキルや社会人マナーが早期に身につき、転職にも強い
サービス業では接客を通じて自然と敬語やビジネスマナー、クレーム対応などが身につきます。これらのコミュニケーションを始めとしたスキルは業界を問わず重宝されるため、早くから社会人経験を積むことで、実践的なスキルと自信も育まれます。さらに将来的に異業種への転職やキャリアチェンジを考えたときにも、身につけたスキルが大きなメリットになります。このように早くから現場に出ることで、自信を持って次のステップに進むことも可能になるのです。
・サービス業系に就職するときの注意点
1. 労働時間や勤務形態が不規則な場合がある
サービス業は営業時間が長かったり、土日祝日に勤務が集中したりするケースが多くあります。特に飲食業や販売業では早朝から深夜までのシフト制勤務や、年末年始・大型連休に休みが取りづらいといった働き方になることもある業界です。そのためサービス業系の就職先を選ぶ際は、事前にシフトの仕組みや休日制度をよく確認し、自分のライフスタイルと合っているかを見極めることが大切です。
2. 体力やメンタル面での負担がかかることもある
サービス業系はお客様と向き合う仕事のため、笑顔や丁寧な対応を保ち続ける精神的なタフさが求められます。また、立ち仕事や忙しい時間帯の対応など、体力的な負担も無視できません。特に新人時代は覚えることも多く、慣れるまでは疲れやストレスを感じやすい点に注意が必要です。事前に業務内容や職場の雰囲気を理解しておくことが、長く働くコツとなります。
3. 将来的なキャリアプランを意識しておくことが重要
サービス業には現場で働き続ける道だけでなく、本社勤務やマネジメント職、独立開業など多様なキャリアがあります。一方で、がむしゃらに働いているうちに将来のビジョンが曖昧になるケースも少なくありません。サービス業に就職する場合は、数年後にどのようなポジションを目指すのか、どんなスキルや資格を身につけたいのかといったキャリアプランを早い段階で考えておくことが大切です。
・サービス業系の会社を選ぶときのポイント
1. 提供するサービスの種類と強みを把握する
サービス業といっても、飲食、ホテル、旅行、介護、美容、教育、コンサルティングなど非常に幅広い分野があります。業種や会社によって得意とするサービスの内容や顧客層が異なるため、自分の興味やキャリアプランに合った分野を明確にすることが重要です。また、その企業がどのような価値を顧客に提供しているのか、他社と比べてどんな強みを持っているのかもチェックしておくとよいでしょう。
2. 顧客満足度やリピート率を重視しているかを見る
サービス業では顧客との接点が多く、人との関わりが業績に直結します。単に売上や規模を見るだけでなく、顧客満足度を重視しているか、クレーム対応などの体制が整っているかを確認することで、働きやすさやサービス品質の高さを見極めることができます。公式サイトや口コミの確認や顧客層のチェック、企業インタビューなども参考にするとよいでしょう。
3. 従業員への教育体制と働きやすさを確認する
サービスの質は従業員のスキルやモチベーションに大きく左右されます。そのため、社内での教育制度やキャリアアップ支援が充実しているか、また職場環境や福利厚生、労働時間の管理など働きやすさにも注目しましょう。特に接客や対人スキルを磨きたい場合は、現場での研修やOJT制度の充実度がポイントになります。


