高校生のための就職マップ

運輸・旅客系ってどんな業界?

運輸・旅客系の仕事は鉄道・バス・タクシー・航空・船舶など人や荷物を安全に目的地へ届ける仕事です。社会を支える重要な役割を担っている運輸・旅客系は、今大きな転換期を迎えています。

まず運輸・旅客系の業界の課題として挙げられるのは人手不足と高齢化です。運転士や整備士は熟練の技術と経験が必要で、長時間の集中力や責任感も求められます。しかし早朝・深夜勤務や不規則なシフトが多く、若い人が定着しにくいという現実があります。

また、運輸・旅客系の業界では安全確保とサービス品質の両立も重要なテーマです。運行の正確さや接客対応、車両の整備などすべてが利用者の安心につながります。特に観光地や都市部では外国人旅行者への対応など、柔軟な接客スキルも求められる場面が増えています。

運輸・旅客系の業界では、新しい技術の導入も進んでいます。自動運転バスやAIによる運行管理、MaaS(次世代交通サービス)など、新しい移動の形が広がりつつあります。ただし、こうした技術を活かすには新しいスキルを持つ人材が必要なため、現場の教育体制が追いつかないことが課題です。

これから運輸・旅客系の仕事を目指すなら、「安全第一」の意識を持ちつつ、新しい技術やサービスにも柔軟に対応できる力を磨くことが大切です。

参考:国土交通省「日本版MaaSの推進」

運輸・旅客系の業界はトラックやバス、タクシーなどの陸上輸送に加え、鉄道、航空、船舶といった幅広い分野を含みます。物流業務や旅客輸送は社会インフラとして欠かせないため、高校卒業後すぐに働きたい方にとって求人も多く、安定性の高い業界の一つです。

令和6年度の文部科学省「学校基本調査」によると、高卒就職者全体のうち 約5.0%(2,500人前後) が運輸業・郵便業に就いており、製造業・建設業・サービス業に次ぐ割合となっています。求人ニーズは全国的に安定しており、特に地方ではドライバーや鉄道・バス運行スタッフの需要が高い傾向があります。

一方、厚生労働省「令和5年雇用動向調査」によれば、運輸業・郵便業の離職率は15.8%と全産業平均(15.4%)とほぼ同水準です。ただし、長距離輸送や深夜勤務を伴う職種では労働時間が長くなりやすく、生活リズムや体力面の負担が離職の要因となる場合があります。

車や乗り物が好きで社会を支える仕事に魅力を感じる高校生にとっては、やりがいを見出しやすく、将来的に大型免許や二種免許、各種資格を取得してキャリアアップできる点も大きな魅力です。

就職率について

(令和6年度学校基本調査より)

(厚生労働省「令和5年雇用動向調査」)

鉄道・バス・航空・船舶などの運輸・旅客系の業界は人や物の移動を担うインフラとして、日常生活や経済活動に欠かせない存在です。これらは公共性が高いことから安定した雇用が見込めます。さらに、大規模なイベント開催時など社会の重要な場面で直接人々の役に立つ実感が得られるのも大きな魅力です。「人を安全に目的地へ届ける」という責任感とやりがいを持って働けるため、長期的にモチベーションを保ちやすい業界といえます。

運輸・旅客系の業界で運転士や車掌、整備士、運行管理などの職種は、高度な専門知識や資格が必要なため、入社後早い段階から現場経験を積むことができます。社内研修やOJTを通じて基礎を身につけ、必要な国家資格や免許を会社の支援を受けながら取得できる場合も多いです。20代のうちに重要なポジションに就けるチャンスもあり、若手のうちから責任ある業務に携われる点は、早くキャリアを形成できる大きなメリットです。

運輸・旅客系は単なる現場の運行業務だけでなく、接客・観光案内・安全管理・運行計画作成・営業・教育研修など多岐にわたる職種があります。現場での経験を活かしながら内勤や管理職、企画部門などへ異動できる道もあるため、ライフステージや体力に合わせた働き方にシフトしやすい環境です。働いている人の中には、現役を引退した後に関連会社や教育部門で後進育成に携わるケースもあるため、一生を通じて業界に関わり続けられる可能性があります。また、特に物流業界は得意先との接点も多く、起業しやすい環境でもあります。

鉄道・バス・航空・船舶などの運行は早朝から深夜まで、さらには24時間体制で行われます。そのため、勤務シフトは夜勤・早朝勤務・土日祝日の出勤を含む場合が多く、生活リズムが不規則になることが多いです。そこであらかじめ入社前に、配属先の勤務体系やシフトのサイクルをよく確認しておくことが大切です。特に夜勤や長時間勤務が体力的に負担になる人は、事前に自分の生活スタイルや健康面との相性を考えておく必要があります。

運輸・旅客業は多くの乗客や荷物を安全に目的地まで運ぶことが最優先です。そのため、ちょっとした判断ミスや不注意が大きなトラブルや事故につながる可能性があります。また、乗客対応ではクレームや緊急時の案内など、冷静で的確な対応力が必要です。「人命を預かっている」という意識を常に持ち、緊張感のある環境でも安定して働ける精神的な強さが求められます。安全性に対する意識など、適性も必要です。

入社した後、最初から運転士や主要ポジションを任されることはもちろんありません。まずは清掃や車両点検補助、切符販売、案内放送、荷物の積み下ろしなどの基礎業務から始まります。この期間は思っていたよりも華やかさや動きのある仕事が少ないと感じるかもしれません。ですが、この基礎経験が将来の昇格や専門職へのステップアップに直結します。まずは忍耐強く基礎を学び続けられるかが、その後のキャリアを左右することを覚えておきましょう。

運輸・旅客系は人命や荷物を安全に届ける責任が大きく、法令遵守や安全基準が厳格に定められています。そのため、運輸・旅客系の会社を選ぶときには過去の事故・トラブルへの対応、国の安全評価、第三者からの口コミなどを調べるようにしましょう。安全意識の高い会社ほど教育体制や設備投資も充実しており、安心してキャリアを築けます。また、企業訪問などで実際の現場を見てみることも大切なポイントです。

運輸・旅客系の鉄道・バス・フェリー・タクシーなどは地域密着型の企業が多く、地域社会との関わりや安定した需要が魅力です。一方、航空・大手物流・高速バスなど全国規模で事業を展開する会社は転勤や出張の可能性が高く、広範囲の経験を積める反面、生活拠点が変わることもあります。そのため、運輸・旅客系の会社を選ぶときは、将来の働き方や生活設計に合わせて、どちらのタイプが自分に合うかを考えましょう。

運輸・旅客系の企業では安全性やサービス品質を維持・向上させるために、定期的な設備更新やデジタル技術の導入が欠かせません。近年では、鉄道・バスの新型車両導入やバリアフリー化、自動ブレーキや衝突防止装置などの安全支援システムの搭載が進んでいます。このように効率化と環境負荷の低減を同時に実現する動きが広がっています。また、デジタル化の面では、ICカードやQRコードによる乗車・搭乗、オンライン予約やスマホアプリでの運行情報など、業務とサービスの両面でIT化が加速しています。そのため会社選びの時は、企業が最新技術をどの程度取り入れているかをチェックして、将来性や職場環境の質を見極めましょう。