【現状と課題】
現在のインフラ業界では設備の老朽化と人材不足が深刻な課題として長らく指摘されてきました。しかし近年ではデジタル技術の導入が進み、これらの課題克服に向けた取り組みが少しずつ始まっています。たとえばセンサーやドローンを活用した設備点検、AIによる劣化診断などインフラ維持管理の効率化が進んでおり、点検の省力化やコスト削減につながっています。
現場では熟練作業員の高齢化が進んでおり、若年層の担い手不足が大きな問題となっています。技術継承やデジタル機器の活用において、年齢層の高い労働者がDX(デジタルトランスフォーメーション)化に対応しきれないケースも多く、導入格差が生じているのが現状です。
また、自然災害の激甚化を背景にインフラの強靭化が求められる中、更新・改修にかかる費用や労力は増す一方で、財政的な制約から十分な対応が難しいというジレンマも抱えています。
こうした中インフラ業界では「安全」「スマート」「持続可能」といった新たな価値の実現を目指し、業界の魅力向上と若手人材の参入促進に向けた動きも始まっています。特に働き方改革やICT化の推進によって、将来的にはより柔軟でスマートな労働環境の実現が期待されています。
・高校生の就職率
インフラ系業界は高校卒業後すぐに働きたいと考える人にとって、非常に現実的で有望な進路のひとつです。電気・土木・設備などインフラ系業界と親和性の高い工業系学科では就職率が99.4%に達し、ほぼすべての生徒が高校卒業後の就職を果たしています。これらの数字からもわかるように、インフラ業界は安定した雇用の受け皿であり、高校卒業後にすぐ働きたいと考えている人にとって将来性と安心感のある進路のひとつになっています。
就職率について
令和7年3月高等学校卒業の就職状況(令和7年3月末現在)に関する調査より
・高卒でインフラ業界に就職するメリット
1.景気に左右されにくく安定した収入が見込める
インフラ系業界は人々の生活に欠かせない電気・水道・道路・通信などを支える業界のため、景気が悪化しても需要がなくなることはありません。公共事業や大規模なメンテナンス計画が継続的に行われることから、他業種と比べて安定した雇用と収入が見込めます。早期に現場経験を積めば、年齢に関係なく安定した収入を得ることができ、将来設計もしやすいのが大きな魅力です。
2.社会貢献度の高い仕事でやりがいを実感できる
インフラ系の仕事は道路、橋、上下水道、電気、通信など、人々の暮らしや経済活動を支える当たり前を守る役割を担っています。災害時の復旧対応や設備の点検・補修など目立たないけれど欠かせない仕事が多く、自分の働きが誰かの役に立っていると実感できる場面が多いのも特徴です。「社会の土台を支えている」という誇りを持って働けるやりがいの大きな仕事です。
3.DXや最新技術に触れられるチャンスがある
近年はインフラ業界でもDX化が進んでおり、最新のテクノロジーを活用する現場が増えています。ドローンによる設備点検やAIを使った劣化診断、3Dデータを用いた設計支援など従来のイメージとは異なるスマートな働き方が広がっています。そのため高卒で入社しても最先端の技術に早い段階から関われる可能性があり、時代に合ったスキルを身につけるチャンスがある業界です。
・高卒でインフラ系に就職するときの注意点
1.体力的・精神的にハードな場面もある
インフラ系の仕事は現場作業が中心になることが多く、夏の猛暑や冬の寒さといった厳しい環境下での作業も避けられません。また、早朝や夜間、休日対応などが求められる場面もあり、生活リズムの調整が難しい時期もあります。初めのうちは体力的・精神的に負担を感じることもありますが、経験を積むうちに自分なりのペースややりがいを見出しましょう。
2.最初は地道な作業が中心になることも
インフラ系の現場では安全や正確さが求められるため、いきなり大きな仕事を任されることはほとんどありません。最初は先輩のサポートや掃除、資材の運搬、道具の準備など、基本的で地道な作業が中心になります。はじめは物足りなさを感じるかもしれませんがこうした経験を通じて現場の流れやルール、専門知識を自然と身につけることが可能です。焦らずコツコツ続けることが信頼とスキルにつながります。
3.会社選びは「育成体制」と「資格支援制度」をチェック
高卒でインフラ業界に就職する場合、入社後の成長を大きく左右するのが「育成体制」と「資格取得支援制度」の有無です。未経験からスタートするからこそ基礎から丁寧に教えてくれる研修制度や先輩がしっかりサポートしてくれる環境が重要です。また、業界では資格があると仕事の幅が広がり、収入アップや昇進にもつながるため、受験費用の補助や講習支援などを行っている会社を選ぶと安心です。就職先を決める前にこうした制度の有無をしっかり確認しておきましょう。
・インフラ系業界の会社を選ぶときのポイント
1.インフラ分野の専門性と将来性を見極める
インフラ業界と一口にいっても電力、ガス、上下水道、通信、道路、鉄道など、多岐にわたる分野があります。会社によって得意とする分野や取り扱う事業が異なるため、自分がどの分野に興味があり、将来的にどんなスキルを身につけたいのかを意識して選ぶことが大切です。また、国の方針や社会の変化によって成長が見込まれる分野もあるため、その企業の将来性や安定性を調べておくことも重要です。
2.民間系か公共系かで働き方が変わる
インフラ系の会社には主に公共事業を中心に行う「公共系」と民間企業の設備を手がける「民間系」があります。公共系は国や自治体の案件が多く、安定性が高い一方で、入札や厳格なルールに沿った業務が求められます。民間系は柔軟な対応が求められ、案件ごとにスピード感や顧客対応力が必要とされることが多いです。会社の性質によって働き方や職場の雰囲気が大きく変わるため、自分に合ったタイプを見極めて選ぶことが大切です。
3.現場中心か内勤寄りか、働き方のバランスを考える
インフラ系の仕事には屋外での作業が多い「現場中心」の職種と、図面作成や進行管理などを行う「内勤寄り」の職種があります。会社によっては現場経験を積んだ後に内勤へ移る流れもあれば、最初から管理系の職種を目指せるケースもあります。自分が体を動かす仕事に向いているのか、デスクワークに興味があるのかを考えたうえで企業を調べておくことが重要です。
